がんの痛みは自分でコントロールすることが出来る?

こんにちは。

今回は、先日の記事でも紹介した書籍「がんの最後は痛くない」のレビューと共に「がんの痛みは自分でコントロールすることが出来る?」について話したいと思います。

最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

過去記事≪時々、怖くなる時。≫

<前置き>

まずは、がんに対する私自身の漠然としたイメージは、

がん=余命わずか=苦しむ、痛い”というテレビ(メディア)の影響をそのまま受けた状態でした。

 

ですが、最近は少しずつ様々な書籍や人の話(主治医も含めて)、体験者のブログなどを自分なりに集めて咀嚼して理解することで今まで漠然と抱えていた疑問や不安に対して自分なりの答えをみつけつつ、実践している最中になります。

その1つの一環として、当サイトを立ち上げた理由の1つでもあります。

 

そこでその1つの不安を解消してくれた(後押ししてくれた内の1冊)のが本書です。

 

この著者は大学病院、国立病院、私立病院などの勤務を経て自身で在宅緩和ケア専門の診療所を開設し現在も終末期のがん患者の在宅療養を応援している方になります。

 

私自身が緩和ケアを知ったのは過去の記事でも触れましたが、ある乳がん患者の方が書いた書籍からでした。

その方は、根治を目指した治療はせずに痛みを取る為だけの緩和ケアに通っているという件がありました。

 

その時に、初めて緩和ケアの実態や診療内容や目的を知る事となりました。

※その本で登場する緩和ケアでは少しでも状態を楽にするための治療はしない様な話がありましたが、それはその病院や担当医師によって異なることは他の書籍でも分かっていますのであくまで一例として捉えて頂ければと思います。

 

その時に、痛みが出た場合には、主治医と話しながら服用方法から服用する量、更には薬の種類を変えて”痛みを感じずに生活の質(クオリティーオブライフ)を落とさずに過ごす”事を目的としている事が分かりました。

 

ただし、語弊が出ない様に追記するならばそれは、病気になる前の状態とイコールではないという点です。

生活の質とは、その時点での”今”の自分の状態にとっての生活の質(痛みを感じずに)を落とさずに過ごすことが重要視されていることです。

だからこそ、本書の著者も終末期のがん患者の在宅療養を応援しているということなんだと思います。

と、前置きが長くなりましたが…

 

<ポイント>

本書のポイントというか私的に重要だったのは

がんになったら必ず痛みがでるわけではない”ということと、”がんになって痛みが出たとしても、苦しまないで済むんだ”という2点になります。

そして、”なぜ今までそういった風に思ってしまうようになったのか”も改めて認識させられました。

 

では、具体的に見ていきましょう。

<身体的な痛みをどう取るか>

まずは、痛くなる仕組みを知る。

 

がんの痛みは、がん細胞が痛みを感じる神経を刺激したり、壊したりすることで起こります。

 

そして、

 

体のいろいろな場所に痛みを感じる神経のアンテナ(侵害受容体と言います)があって、そこに何らかの刺激が来れば、その信号が末梢神経や脊髄神経を通って脳に行き、痛いと感じるわけです。

 

つまり、

 

がんが侵害受容体あるいは神経線維そのものなど、痛みに関わる神経を刺激したり傷つけたりする方向に広がっていくと痛みが起こるし、そうでないと痛みは起こりません。

P94より引用

 

ここで、1つの不安”がんになったら必ず痛くなる”という点が解消されたことが分かりました。

 

本書では肺がんを例に挙げていました。

そして、痛みが起こる可能性が大きくなる場合として、”がんが骨に転移する”という点も挙げていました。

但し、骨へ転移したからと言って痛みが起きるとは限らず、転移した部分では骨がもろくなり、病的骨折と言って折れやすくなり、それによって骨がずれて痛みが起こる場合もあるという事も解説されていました。

 

また、痛みとは一口に言っても直接神経を刺激する形で起こるがんの痛みだけではなく、がんがあることで体の動きが少なくなったり、痩せたりした結果、間接的にあちこちに痛みがおきる場合や息苦しさやだるさ、気持ちのつらさなども考えられます。

 

次に、

痛みはトータルで捉える。

私はがんの痛みを問題にするとき、モルヒネが効く痛みと、効かない痛みがあるという言い方をします。

 

どいう事かというと、

痛みの神経を刺激するようにがんが進んだ結果生じる痛みには、モルヒネはよく効きます。

(但し、侵害受容体を刺激せずに末梢神経や中枢神経そのものが傷ついたことによって起こるしびれなどの痛みの場合はモルヒネが効きづらい)

 

一方で、

がんが神経を刺激するわけではないのに生じる痛みには、一般的にモルヒネが効きません。

 

そこで、効かないからといって「我慢して下さい」というわけではなく…

 

<概念>モルヒネが効かない痛みを考える際に大切なこと。

 

イギリス近代ホスピスの創始者シシリー・ソンダースが提唱した

トータルペイン

その人全体を見る(全人的にトータルで見る)という視点で考えたとき、がん終末期の痛み・苦痛は、①身体的痛み、②社会的痛み、③精神的痛み、④スピリチュアルペインの四つに分けて考える必要があり、それらは深く関わり合っているので、別々には切り離さず、トータルなものとして捉えていく必要がある、と提唱したのです。

 

①身体的痛みとは、

基本的にはがんが痛みを感じる神経にまで進展することで生じる痛みであり、吐き気、便秘、だるさなどの多くの苦痛を伴う症状も含まれます。

 

②社会的痛みとは、

社会の関わりから生ずる痛み。

がんになったことで、それまで担っていた社会的な役割が果たせなくなり、ある種の疎外感や焦燥感を感じることで、そうした感情によって苦痛を生む場合があります。

 

③精神的痛みとは、

パーソナルな面での不安が生む痛みです。

「この先どんな辛い事が待っているんだろう」「死んだら家族はどうなるんだろう」という不安や「治療法を間違えたのではないか」「なんで病院は親切にしてくれないんだろう」など、それまでの治療やケア側に対しての不信の念を抱くことによって、苦悩を深める人もいます。

 

④スピリチュアルペインとは、

人生の意味や罪悪感や「私の人生は何だったんだろうか」「生きている意味はあるのか」と言った、人としての根源的な問題に触れる様な苦悩に苛まれる人もいます。

「魂の痛み」とも訳される事もあります。

 

この4つの痛みに対するケアが充分でないと、実際に体の痛みとして現れる

その人が抱えている痛みは、常に体と心のその人全体の問題として捉えることが必要だと提唱しています。

 

それは、私自身もがんと告知されてから、検査、治療、経過を経ても実際に実感している事です。

そして、はじめは痛みを訴えても理解されないことへの苦しみがいつの間にか己が弱いからだと思い始め、更には家族に対する負い目を感じる様になり本当に一時期は自暴自棄になりかけていた時がありました。

 

ですが、気持ちを理解してくれる人が現れ、痛みの原因を突き止めることができ、自分でその原因を理解し対処する事で痛み止めでは治らなかった痛みがなくなった事は小さく些細な事でも希望に変わりました。

 

話は戻って、

身体的な痛みに対しては、がんの勢いを止める事が基本的な治療になる

 

例えば、

脊椎骨(背骨)にガンが転移して起こる痛みには、鎮痛剤を使うと同時に、しばしば放射線治療が施されます。がんが骨を壊したり、神経を圧迫したりして痛みを引き起こしているので、がんを放射線で縮小するわけです。状況によってはがんを手術的に取り除き、背骨を補強することもあります。

 

しかし、がんに直接的に働きかけて痛みを取る治療には限界があり、この直接的な方法が取れない場合や患者さんにとって必ずしも有利ではなない場合は、鎮痛剤で痛みを取る事になる。

 

その時の標準治療として取り入れられているのが

WHO三段階除痛ラダー(WHO方式)です。

日本ペインクリニック学会にて表が掲載されています。

 

この方式は大変簡素で分かり易く、しかも実効性があるという画期的なもので、1986年にはじめて公表され、すでに20年以上の歴史があります。

 

そして、これにプラスして鎮痛剤の5原則があります。

①口から飲むのを基本にする。

②時刻を決めて規則的に服用する。

③三段階除痛ラダーに沿って効力の順に使用する。

④患者ごとに個別的な量を投与する。

⑤患者に見合った細かい配慮をする。

 

これによって、世界のどんな国でも実施可能で、同じように効果を得られるように作られました。

 

又、現在鎮痛剤にも多数の種類と強弱のあるタイプが登場したり、以前なら注射をして直接痛みを取る方法だけだったのが、フェンニタル(麻薬)という貼り薬(三日に1度貼りかえる)やモルヒネの徐放剤(徐々に体内に吸収される薬)が登場したことによって服用する時間の間隔が伸びたことによって負担が以前より軽減されつつあります。

 

これによって”がんになって痛みが出たとしても、苦しまないで済むんだ”という事がわかりました。

 

そして、このモルヒネなどの麻薬を使う事を怖いと思ってしまった理由も

④の「患者ごとに個別的な量を投与する」という原則に従って行うことで”一回に飲む薬の量は、人それぞれの「それで痛みが取れる量」にしましょう。

 

と、なるわけです。

これによって、人によって必要な量も違うと言う事が処方する医師も服用する患者自身も理解することができ、そこを基準にすることで「あまり飲まない方がいいんじゃないか」と我慢してしまうことも、逆に飲み過ぎてしまうこともせずにちょうど良い量を話し合うことができます。

 

更には、

⑤の「患者に見合った細かい配慮をする」をすることで、量で補う事ばかりに注力せずに薬の正しい飲み方をきちんと知った上で、その間に痛みが出た場合のレスキュー(頓服)の飲み方も併せて知り、薬や副作用に対する不安なども細かな注意事項を患者本人だけでなく家族も理解することで、もしもの時にも慌てずじっくりと自分の身体と向き合いながら経過を見る事ができます。

 

確かに、認識不足から不安に駆られて自分の必要量以上を飲んでしまえば麻薬で頭がボーっとしてしまいそうですよね。

 

いよいよ痛みが出た時は全てを”がん”と結び付けてしまう。

今、痛いと感じているのは、本当にがんのせいなのか、がんになる前からそういうことがなかったかを落ち着いて判断してもらうことも重要だと本書で伝えています。

 

そして、最後に本書で実に興味深かったのが

「何でもかんでもがんのせいにしたら、がんがかわいそうです」とも。

 

<書籍紹介>

<あとがき>

痛みについてですが、言葉で書けば1行ですが、当事者にとっては、すごい重要です。
ちょっと、痛いだけでもチラッとイラっとするのに…持続的な痛みとか…!

ただ最近は、本書に書いてあった通りがんの痛みについても理解が変わってきました。
がんも虫歯と同じように虫歯菌によって歯が侵食され傷つけられて神経を剥き出しにしたり圧迫したりすることで痛みが発するのではないか?

これって、もしや同じ…?と思いました。
最初に虫歯菌が出来た時はまだ痛みはないよな~。と、考えています。

※がんに対しての詳しいメカニズムに対しては近藤誠氏の書籍の方が詳しく掲載されているので是非一度は知っていて損はなく、むしろ知らない方が損してたなと私自身、感じてます。

 

中々、手術など治療を目的とした医師達医療現場のスタッフにとっては痛み止めの薬は点滴、座薬、飲み薬と種類はありますが入院中になる院内処方となり数や種類は限られてしまうので手術後の痛みなどをコントロールしきることは不可能だという印象を実際経験しました。

又、痛い時には教えて下さいと言われても痛み止めでは取れない痛みがある事に対する認識不足もある点については否めないと思います。

 

やはり、そう言った点も医師達だけに頼りきり任せきりにせず自分の身体の事は自分自身が主体的となってどういった視点で行うのかが大切だと思います。

今は、その必要はなくとも知識が頭の片隅のどこかにあることはとても重要だと思います。

人は自分の見たもの、知った事、感じたものの範囲でしか考えられません。

そして、病気というアクシデントが起こった時には更に精神状態を平常時と同じ様に保つのは難しいことです。だからこそ、その前に1つの意見、知識として知っておくことで狭くなりすぎずに少しでも余裕を持つことが可能になります。

事前の準備をする範囲はそれぞれに委ねますが、少しでもすることで余裕が生まれることの大きさは今後の自分の可能性にも繋がることは間違いありません。

 

こんな話をしていたら子供達が良く見ていた”慎重勇者”というアニメを思い出してしまいました。ちょっと見てみようかなと思ったり…(笑)

では。

 

2件のコメント

  1. ピンバック:その痛みは、本当にがんの痛みなのか? | with GUN.

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